【両手仲介ってなんですか?片手仲介ってなんですか?】|不動産取引前におさらいしたい6つのこと

両手仲介って何ですか?

あなたは『両手仲介』もしくは『片手仲介』という言葉を知っていますか?

この言葉は、不動産仲介形態による手数料収入に関連した、いわゆる業界用語です。

しかし、『両手仲介』『片手仲介』の賛否について頓に語られるようになってきた昨今、今一度不動産仲介の仕組みと不動産業者の動機について語ってみたいと思います。

1.不動産取引における両手仲介ってなんですか?

不動産取引における両手仲介ってなんですか?

両手仲介とはなんでしょうか?不動産業に従事して間もない方・そうでない方、もう一度、不動産仲介の仕組みをおさらいしてみましょう。

1-1.不動産屋売買において両手仲介とは売主・買主双方を担当すること

両手仲介とは?

不動産仲介業者が売り希望者・買い希望者の両者を担当し、依頼者双方から手数料を受領する形態を『両手仲介』と呼びます。

不動産業者は仲介した物件が成約するとその対価に『仲介手数料』を得る事が出来ます。

この仲介手数料、宅建業法において上限は成約価格に対し3%+6万円と定められています。

1-2.両手仲介の場合の手数料の例

例として、5000万円のマンションを成約させたとします。

注:登場人物 不動産業者X社 売主:A氏 買主:B氏 (合計3名)

不動産業者であるX社はA氏からマンションの売却依頼を受けていました。そのマンションに対しB氏からX社へ購入したいと意思表示を受け契約~引渡しまで終えた際に受領できる手数料額は

 

A氏→X社 5000万円×3%+6万円=156万円(税別)

B氏→X社 5000万円×3%+6万円=156万円(税別)

 

手数料合計額:312万円(税別)

上記、両手仲介になった場合の手数料上限額の例でした。つまりA氏、B氏両者の担当をすれば不動産業者であるX社は312万円を上限として仲介手数料を受領することが可能です。

1-3.不動産業者は基本的に両手仲介を狙う

最近では『片手仲介』を売りにしている不動産仲介業者もありますが、基本的に不動産仲介業者は両手仲介を狙うと言ってしまってもいいと思います。理由は単純ですが、不動産仲介業者の主な収入源は仲介手数料になりますので両手にしたいという心理が働きます。それゆえ、売却活動に専念したり広告費を捻出したりするわけです。

余談ですが、私が不動産営業時代、お預かりした物件では両手仲介になるように行動しておりました。

2.不動産取引における片手仲介ってなんですか?

片手仲介ってなんですか?

両手仲介についてご理解頂けましたでしょうか?続いて、片手仲介について解説します。

2-1.不動産売買取引において片手仲介とは売主・買主のどちらかの担当をすること

上記では、両手仲介について解説しました。では片手仲介とは何か?

例えばあなたが不動産仲介業者であるとして、ある依頼者より物件売却の依頼を受けたとします。その物件に対し、他社の担当している購入候補者から購入の申し込みがあり、契約~引渡しをして仲介手数料を受領するケースを片手仲介と呼んでいます。

また、逆も然りでしてあなたが購入候補者から物件が欲しい旨のリクエストを受けていて、希望に沿う物件を紹介し成約した場合も片手仲介となります。(物件が業者売主物件・代理物件の場合は例外とします。)

つまり、売却依頼者のみ担当するのか、購入希望者のみ担当するというケースを片手仲介と呼んでいるのです。

2.片手仲介の場合の手数料の例

例として、5000万円のマンションを成約させたとします。

注:登場人物 不動産業者:X社 売主:A氏 不動産業者:Y社 買主:B氏 (合計4名)

不動産業者であるX社はA氏からマンションの売却依頼を受けていました。そのマンションに対しY社を通じB氏からX社へ購入したいと意思表示を受け契約~引渡しまで終えた際に受領できる手数料額は

A氏→X社 5000万円×3%+6万円=156万円(税別)

B氏→Y社 5000万円×3%+6万円=156万円(税別)

手数料合計額:312万円(税別)

上記ケースではX社の仲介手数料収入は156万円、Y社の仲介手数料収入は156万円となります。

両手仲介の場合と比べると1社あたりの収入は両手仲介で成約した場合の1/2となります。

3.こんなケースは両手仲介になる

両手仲介になるケース

ではどのような場合、両手仲介取引になるのでしょうか?

3-1.物件がいい

誤解の無いように断っておきますが、物件がいいとは、物件のスペックに対して価格が間違っていない場合も指しています。

一般的には希少性がある=いい物件となりますが、この場合では価格さえ間違ってなければいい物件です。

不動産業者が査定する際、不動産会社のスタンスにもよるでしょうが基本的には売れなければ報酬が発生しません。これにより、成約するであろう数字で媒介契約を取るという行動様態にインセンティブが働くのです。

物件が反響がある、成約するであろう形で市場に出せるのであれば必然的に自社に反響なり購入相談がきますので連動して両手で仲介する確率が上がるわけです。

3-2.担当者の営業が原因で売れる

仮に、市場価格(いわゆる相場)より高めに出しても売れないというわけではありません。例えば、○○エリアで探している購入候補者がいた場合、その物件しか候補がなく購入動機が強い、もしくは僅かでも動機ある条件では成約する場合もあります。

また、物件を担当する営業が販売スキルに長けている場合、高くても売れるケースがあります。上記でも説明しましたが、自分が担当している物件で成約を目指すのはある意味セオリーですので販売に対する姿勢は他の担当より意識が高くて当然です。

いい例えかどうかわかりませんが、まれにダイヤモンドを売るスキルを持っている系の営業マンがいます。そういう営業マンは物件に関係なく成約させることが出来ます。(いわゆるボールペンを100万円で売れるような人です。

すこし話が逸れましたが両手仲介になる要因は営業マンの腕次第だったりもします。

3-3.たまたま自社に相談した人からの案内で決まる

たまたま決まるケースです。反響の導線はなんでもいいのですが、例えば購入候補者からなんとなく探していますと相談されて自分が担当している物件を紹介したら成約するケースです。

これについては狙って出来るものではありませんが年に1回くらいこのようなケースがあります。

4.こんなケースは片手仲介になる

片手仲介になるケース

上記とは反対にどのような場合、片手仲介になるのでしょうか?

1.物件が自社で売れない

自社で売却依頼を受けている物件を自社で売れない場合です。基本的に媒介を受けるとレインズ(指定流通機構)へ物件情報を登録するのですが、他の不動産業者が抱える購入候補者がいれば他社から自社へ問いあわせがきます。そして、現地案内~契約~引渡しとなればこれは片手仲介という事になります。

自分が担当している物件に直接、購入候補者から連絡があるとは限りません。例えば、物件探しでいろいろ不安なので知り合いの業者に探してもらうという事は往々にしてあるわけです。

関連記事:レインズについてはコチラの記事『損したくない|把握しておきたいマンション売却の流れ』内、3-1で解説しております。

2.担当者の営業が原因で売れない

売却物件の担当者がダメなケースです。語弊があるかもしれませんが、売れる状況なのに担当が原因で売れないなんてことがあります。その物件が購入候補者からみて一番よく、他に候補がない場合は仕方なくその担当から買うという事もありますが、なんか嫌だなと相手から思われ他の物件で決めるというケースも少なくありません。

余談ですが、過去私の知り合いがどうしても欲しい物件があるけど担当がすごく嫌だ、という事例がありました。(契約後、いろいろと揉めてたのを思い出しました。)

3.たまたま他の会社に相談した人からの案内で決まる

やはり、たまたま決まるというケースです。上記2-3.でご説明した通り、たまたま契約まで至るケースがあります。これについてはコントロールしようがありませんが頻繁にあるわけでもありません。

5.なぜ両手仲介にしたいのか

なぜ両手仲介にしたいのか?

上記1-3.で少し触れましたがなぜ不動産業者は両手仲介にしたいのでしょうか?

5-1.不動産営業マン・営業所に設定されているノルマ

不動産会社にもよりますが、基本的には営業マンにはノルマがあります。達成できる数字設定なのかできないのかは置いておきますが、すべての営業マンはその数字達成の為に1ヶ月頑張るのです。

早く目標達成できるのが一番いいとすれば、仲介手数料を多く稼ぐためには両手仲介という発想になりますし、ならないと変だとも言えます。

反論として、『営業マンのノルマにお客は関係ないだろ』と聞こえてきそうですが、当然ノルマと分けて接客する必要がありますし、お客さんにはノルマは関係ありません。それにノルマを悟られて同情されたら終わりだとも思います。そうならない為に複数件、案件を持つべきだとは思います。また、経験則ですがいい循環を作っている営業マンないし営業所は余裕がある傾向にあります。毎月キツいノルマで自転車操業状態になっている場合だとガッいたら逆効果の場面でもガッついてしまう場合もあります。

すこし話は逸れましたが、数字を作りたいという基本原則が両手仲介の動機だと思います。

最近の不動産会社では固定給を挙げて歩合は下げる、つまりガツガツしなくてもある程度の収入が得られる不動産会社も増えてきましたが、悲しいかな不動産屋は数字を追い求める生き物だと個人的に思います。

5-2.担当物件は成約させやすい理由

売却の依頼を受けるとその物件は成約させやすいとも思えます。会社によっては不動産調査の部署があったりする不動産業者もありますが、担当している物件の調査に関しては原則 担当の営業マンが行います。紹介するにあたってその物件についてよく知らなければ紹介も出来なければ、成約に必要な情報を伝える事が出来ません。(調査不足があって仲介責任を問われてもいやです。)

 

関連記事:情報は一気に伝えるとよくないのです。必要な時に情報を出しましょう。詳しくは『不動産売却時と購入時での情報取得の違いからみる販売戦略

6.両手仲介・片手仲介 どっちがいいの?

両手仲介・片手仲介 どっちがいいの?

両手仲介・片手仲介 どっちがいいのでしょう。最近とみに語られがちなのが両手仲介=悪 説ですが本当にそうなのでしょうか?

両手仲介の弊害【囲い込み】 よく両手仲介とセットで語られるけど

事実、両手仲介がいわゆる囲い込みの温床となっている事については否定しません。囲い込みってなに?と思う方もいらっしゃると思いますので少しだけ説明しますと、

どうしても両手仲介をしたい場合、他社から物件の確認があると『話が入っています』とか『契約予定です』と言って他社からの商談をシャットアウトする行為を囲い込みと呼んでいます。結構前ですがニュースでも特集が組まれていました。

そこで当然出てくるのは両手仲介=悪 というような論調です。

皆さんも知る大手仲介会社が囲い込みをしていたという事でかなり印象的なニュースではありましたが、確かに両手仲介をしたい為に囲い込みは悪なのかもしれませんが、両手仲介自体が悪というのは少々言い過ぎなのではないかと思います。

 

少し乱暴かもしれませんが私は結果よければ 両手だろうが片手だろうがどっちでもいいのではないかという意見です。

 

もう少し言いますと、不動産取引というものはケースバイケースですので、これが一番正しいのだ!という答えを提示しにくい対象だという事が非常に厄介なのです。

例えば、売却担当をしている物件に対して他社の担当する購入候補者から申し込みが入り契約となったとしましょう。

取引としてはいわゆる片手取引になります。しかし、その購入候補者がめちゃくちゃな人、たとえば要求が際限ないような方だったとしたら片手取引であれ、両手取引であれ嫌な契約として記憶に残ってしまいます。しまいには契約解除や損害賠償請求コースになるとこれほど嫌なもの事もありません。

 

また別の例とすれば、

同日に自社の案内で100万円指値の買付が入り、他社から150万円の指値の買付が入った場合。

条件にもよりますが他社の150万指値の買付が買い上がるのか打診すればいいだけの話で、無理なら自社で決めればいいのです。

例は極端なケースですが、不動産取引の凡その動機としてはその実

売主:売りたい

買主:買いたい

仲介:まとめたい

ですので、最善の形態で商談がまとまる事を最優先にするべきです。もちろん、仲介業者のエゴで取引が難航する等という事は論外ですが、状況によって柔軟に対応することが最も大切なのではないでしょうか?

繰り返しますが、両手仲介・片手仲介 状況によってはどっちでもいいと思います。

まずは最善の結果とはなにか?関係者各位が納得する形を探ってみましょう。

まとめ

  1. 両手仲介とは1社の不動産業者が売主・買主双方を担当し双方から仲介手数料を受領する形態である。
  2. 片手仲介とは複数社の不動産業者が売主・買主を担当し各々から仲介手数料を受領する形態である。
  3. 基本的に営業マンは両手仲介を目指す。またそれを動機付けるノルマの設定もあったりなかったりする。
  4. 物件担当者が物件に詳しいのは事実でその成約率も価格がおかしかったり・物件に難がなければ高い。
  5. 囲い込みに連動する両手仲介が悪なのであって、両手仲介そのものが悪というのは早合点である。



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