固定資産税を滞納し、住宅ローンの返済も苦しくなった場合は、放置せず、自治体と金融機関の双方へ早めに相談することが重要です。固定資産税と住宅ローンは別の債務であり、一方へ相談しても、もう一方の手続きが自動的に止まるわけではありません。
最初に行うべきことは、①固定資産税の納付相談、②住宅ローンの返済相談、③家計と資産の整理、④返済継続・条件変更・通常売却の比較、⑤必要に応じた任意売却の検討です。差押えの通知が届いている場合でも、状況によっては売却を進められる可能性がありますが、自治体や金融機関など関係者との調整が必要です。
- 税金と住宅ローンは別々に相談する
- 滞納が浅いうちほど選択肢を比較しやすい
- 売却価格ではなく「売却後の手取り」で判断する
- 通常売却で完済できない場合に、任意売却を検討する
固定資産税と住宅ローンは別の債務
固定資産税は土地や家屋などの所有者に課される地方税です。東京23区内では東京都が課税し、その他の地域では原則として市町村が課税します。一方、住宅ローンは金融機関との契約に基づく借入金です。
| 項目 | 固定資産税 | 住宅ローン |
|---|---|---|
| 支払先 | 都道府県・市区町村 | 銀行・信用金庫・住宅金融支援機構など |
| 相談先 | 納税通知書記載の窓口 | 借入先の返済相談窓口 |
| 放置した場合 | 督促、延滞金、財産調査、差押えなど | 督促、期限の利益喪失、保証会社による代位弁済、競売手続など |
住宅ローンだけを支払っていても、税金の滞納処分が進むことがあります。逆に、税金を納めても住宅ローンの延滞が解消されるわけではありません。必ず両方の状況を確認してください。
固定資産税を払えないときに最初にすること
納付期限を過ぎる前後に自治体へ相談する
納付が難しいと分かった時点で、納税通知書に記載された自治体の窓口へ連絡します。収入減少、病気、離婚、事業不振などの事情と、現在支払える金額を整理して伝えましょう。分割納付などの扱いは自治体と個別事情によって異なり、必ず認められるものではありません。
通知書と家計資料をそろえる
- 納税通知書・督促状
- 住宅ローン返済予定表と残高証明
- 給与明細、年金通知、確定申告書など
- 預金残高、保険、他の借入れ
- 毎月の生活費と今後の収入見込み
資料をそろえることで、一時的な資金不足なのか、返済計画そのものの見直しが必要なのかを判断しやすくなります。
住宅ローンの返済も苦しい場合の対応
延滞前に金融機関へ相談する
返済額の変更や返済期間の延長などが可能かは、借入先、契約内容、収入、残高などによって異なります。審査があり、希望どおりになるとは限りませんが、延滞する前のほうが相談しやすい傾向があります。
借換えだけで解決するとは限らない
借換えには審査と費用があり、収入減少や他の借入れがある場合は利用できないことがあります。月々の返済額が下がっても、返済期間が延びれば総返済額が増える場合もあるため、諸費用を含めて比較してください。
返済継続・条件変更・売却を比較する
| 選択肢 | 向いている状況 | 注意点 |
|---|---|---|
| 家計見直しで返済継続 | 不足が一時的で、近く収入回復が見込める | 無理な節約で生活が破綻しないか確認 |
| 返済条件の変更相談 | 収入減少が一時的、または返済期間の調整で改善できる | 審査があり、利息や総返済額が増える場合がある |
| 通常売却 | 売却代金と自己資金でローン・費用を清算できる | 売却後の住まいと引越し費用も必要 |
| 任意売却 | 通常売却ではローンを完済できず、返済継続も難しい | 債権者等の同意が必要で、残債がなくなるとは限らない |
| 競売 | 調整ができず法的手続が進んだ場合 | 所有者が条件や時期を選びにくい |
通常売却できるかを確認する計算方法
判断の起点は、査定価格そのものではなく、売却後に残る金額です。
手取りが不足する場合でも、自己資金で補えるなら通常売却が可能なケースがあります。補えず、金融機関の抵当権を外せない場合は、任意売却の可否を検討します。税の差押えがある場合は、自治体との解除条件の調整も必要です。
固定資産税の差押え後でも売却できる?
差押え後でも、条件が整えば売却できる可能性はあります。ただし、所有者の判断だけで通常どおり引渡しまで進められるとは限りません。登記事項証明書で差押えの有無を確認し、自治体、金融機関、保証会社などと解除条件や配分を調整します。
「買主が見つかってから相談すればよい」と先送りすると、決済期限に間に合わないことがあります。売却を検討した段階で、差押えの有無、滞納額、住宅ローン残高、売却想定額を一緒に確認してください。
任意売却を検討するのはどの段階?
任意売却は、住宅ローンが残る不動産を売却し、売却代金だけでは完済できない場合に、債権者の同意を得て抵当権等の解除を受けて売却する方法です。単に「返済が苦しい」だけで直ちに任意売却を選ぶものではありません。
- 家計見直しや条件変更でも継続が難しい
- 査定価格がローン残高と売却費用を下回る
- 自己資金で不足分を補えない
- 競売開始決定などにより期限が限られている
任意売却後も残債が残ることが一般的で、その返済方法は債権者との協議になります。「売れば借金がすべてなくなる」とは限りません。
判断フロー
- 固定資産税の滞納額と期限を確認し、自治体へ相談する
- 住宅ローンの残高・延滞状況を確認し、借入先へ相談する
- 家計の収支を整理し、3~6か月後も返済できるか試算する
- 不動産査定を行い、売却費用を差し引いた手取りを計算する
- 完済できるなら通常売却、完済できなければ任意売却の可否を確認する
- 差押えや競売が進んでいる場合は、関係者との調整期限を確認する
具体例:税金とローンの両方が苦しくなった場合
たとえば、住宅ローン残高3,500万円、売却想定価格3,400万円、売却費用約130万円、固定資産税滞納40万円の場合、単純計算では約270万円不足します。自己資金で補えなければ、通常売却では抵当権を抹消できない可能性があります。
この場合は、家計改善や返済条件変更で保有を続けられるかを先に確認し、難しければ任意売却について金融機関等と調整します。実際の費用・税額・配分は個別に異なるため、概算だけで判断しないことが大切です。
よくある質問
固定資産税を滞納すると、すぐ自宅を差し押さえられますか?
直ちに自宅が差し押さえられると一律にはいえませんが、督促後も放置すれば財産調査や滞納処分が進む可能性があります。通知を無視せず、早めに自治体へ相談してください。
住宅ローンを優先して、固定資産税は後回しにしてよいですか?
どちらも放置すべきではありません。税金とローンは別々に手続きが進むため、両方の窓口へ相談し、支払計画を整理してください。
固定資産税の分割納付は必ずできますか?
必ず認められるものではありません。自治体が事情や資力を確認して個別に判断します。
差押えが登記されていても買主を探せますか?
売却活動が可能な場合はありますが、決済までに差押えを解除できる条件を確認する必要があります。先に自治体や債権者との調整方針を整理することが重要です。
任意売却をすると固定資産税の滞納はなくなりますか?
自動的になくなるわけではありません。売却代金からの配分や残る税額の扱いは、自治体などとの調整によります。
家族に知られず相談できますか?
相談自体は可能ですが、共有名義、連帯債務、連帯保証などがある場合、売却や条件変更に家族の同意・協力が必要になることがあります。
いつ相談するのがよいですか?
延滞前、または最初の督促が届いた段階が望ましいです。競売や差押えが進むほど、調整に使える時間が短くなります。
まとめ
固定資産税と住宅ローンの両方が苦しいときは、一方だけを支払って様子を見るのではなく、自治体・金融機関へそれぞれ相談し、家計と売却後の手取りを同時に確認してください。
通常売却でローンと費用を清算できるなら、任意売却より先に通常売却を検討します。完済できず、返済継続も難しい場合には、任意売却が選択肢になります。差押えや競売が進んでいても調整できる可能性はありますが、時間には限りがあります。
関連記事
参考情報
- 東京都主税局「固定資産税・都市計画税」
- 東京都主税局「納税・納税証明」
- 住宅金融支援機構「返済でお困りの方」
- 住宅金融支援機構「任意売却」
- 国税庁「国税を期限内に納付できないとき」(地方税の制度と同一ではないため参考情報)
一次情報確認日:2026年11月6日。制度・運用は自治体や契約内容により異なります。個別の手続きは、課税自治体、借入先金融機関、弁護士・司法書士・税理士等の専門家へご確認ください。


