結論からいうと、マンションの管理費・修繕積立金を支払えないときは、住宅ローンだけを優先して放置せず、管理会社・管理組合と金融機関の双方へ早めに相談することが重要です。滞納が続くと督促や遅延損害金だけでなく、訴訟・強制執行などの法的手続きへ進む可能性があります。ただし、何か月で一律に競売になるという決まりではありません。家計を整理し、支払い相談、住宅ローンの条件変更、通常売却などを比較したうえで、残債超過の場合は任意売却も選択肢として検討します。
- 管理費・修繕積立金は、住宅ローンとは別の支払義務です。
- 「3か月までは大丈夫」などの安全な期限はありません。
- まず滞納額・今後の収支・住宅ローン残高を同時に確認します。
- 売却する場合も、滞納額の精算方法を管理組合等と調整する必要があります。
- 住宅ローン残高が売却価格を上回るときは、債権者の同意を得る任意売却を検討します。
管理費と修繕積立金は何に使われる費用か
管理費は、共用部分の清掃、設備の保守、管理員業務など、マンションの日常的な維持管理に使われます。修繕積立金は、外壁や屋上防水、給排水設備などの計画修繕に備えて積み立てるお金です。
国土交通省は、管理費等の確実な徴収をマンションの適正管理の根幹と位置づけています。個人の住宅ローンとは債権者も目的も異なるため、「住宅ローンを払っているから管理費は後回しでよい」とはなりません。
| 支払い | 主な相手方 | 滞納した場合の主な影響 |
|---|---|---|
| 住宅ローン | 金融機関・保証会社 | 督促、期限の利益喪失、保証会社の代位弁済、競売申立て等 |
| 管理費 | 管理組合 | 督促、遅延損害金、訴訟、強制執行等 |
| 修繕積立金 | 管理組合 | 管理費と同様。マンション全体の修繕計画にも影響 |
| 固定資産税等 | 自治体 | 督促、延滞金、財産の差押え等 |
※実際の対応や費用は、管理規約、借入契約、滞納状況等によって異なります。
管理費・修繕積立金を滞納するとどうなる?
一般的には、口座振替不能の案内や電話・書面による督促から始まり、滞納が解消しなければ請求手続きが段階的に進みます。国土交通省のマンション標準管理規約のコメントでも、督促、法的措置、強制執行等を想定した考え方が示されています。
滞納額、対象月、振込先を確認します。
遅延損害金や請求費用が加算される場合があります。
判決等を得た後、預金や給与、不動産への強制執行が検討されることがあります。
要件を満たす場合には、区分所有権の競売請求が問題となることもあります。ただし直ちに認められる手続きではありません。
重要なのは、滞納期間だけで判断しないことです。管理規約、管理組合の運用、金額、過去の連絡状況によって対応は異なります。「まだ督促状だけだから大丈夫」と放置しないでください。
売却すれば滞納管理費はなくなる?
売却しただけで滞納額が自動的になくなるわけではありません。区分所有法上、一定の債権は買主などの特定承継人にも請求できる仕組みがあります。そのため実務では、売買契約前に滞納額を確認し、売買代金や決済時の精算方法を調整します。
滞納を伝えずに売却を進めると、買主とのトラブルや決済遅延につながりかねません。査定を依頼するときは、管理費・修繕積立金の月額だけでなく、滞納元本、遅延損害金、請求費用の有無も伝えましょう。
まず48時間以内に確認したい5項目
- 管理会社・管理組合から届いた書類:対象月、元本、遅延損害金、回答期限を確認します。
- 住宅ローンの残高と返済状況:返済予定表、金融機関の通知、次回引落日を確認します。
- 毎月の住宅関連費:ローン、管理費、修繕積立金、駐車場、税金を合計します。
- 今後6か月の収入見込み:賞与、残業代、休職・退職の可能性を分けて整理します。
- マンションの売却見込み額:近隣の売出価格だけでなく、成約事例を踏まえた査定を確認します。
住宅ローンも苦しいときの選択肢
| 選択肢 | 向いている状況 | 注意点 |
|---|---|---|
| 家計の見直し | 一時的な支出増で、数か月以内に改善が見込める | 生活維持に必要な費用まで削らない |
| 管理組合等への支払い相談 | 滞納が始まったばかりで、分割返済の見込みがある | 合意できるとは限らない。口頭だけでなく条件を確認 |
| 金融機関への返済相談 | 収入減等により、現在の返済条件の継続が難しい | 審査があり、返済総額が増える場合がある |
| 借換え | 延滞前で、収入・信用状況が審査条件を満たす | 諸費用と金利だけでなく総返済額で比較 |
| 通常売却 | 売却代金等で住宅ローンを完済できる見込み | 滞納管理費等の精算と転居費用も試算 |
| 任意売却 | 売却しても住宅ローンを完済できず、返済継続も困難 | 債権者等の同意が必要。必ず成立するわけではない |
| 法律・家計の専門相談 | 複数の借入れ、差押え、訴訟書類がある | 早い段階で弁護士・司法書士等に相談 |
具体例:住宅ローンは払えていても家計が赤字になるケース
たとえば、住宅ローン12万円、管理費1万8,000円、修繕積立金2万円、固定資産税の月割り相当1万5,000円なら、住宅関連費は毎月17万3,000円です。ローン12万円だけを見て「払えている」と考えると、実際には毎月5万3,000円の維持費を見落とします。
さらに修繕積立金の段階増額、駐車場代、保険料が重なることもあります。家計判断では、ローン返済額ではなく所有し続けるための総額で比較してください。
通常売却と任意売却の判断フロー
① 査定価格 − 売却費用 − 滞納管理費等を概算
↓
② 住宅ローン残高を完済できるか
- 完済できる見込み → 通常売却を中心に検討
- 不足する見込み → 自己資金で補えるか確認
↓
③ 不足分を補えず、返済継続も困難
金融機関・保証会社等と相談し、任意売却の可能性を検討します。
任意売却では、売却価格だけでなく、住宅ローン債権者、差押債権者、管理費等の精算を含む利害調整が必要です。時間が経つほど選択肢が狭くなる場合があるため、滞納前または督促の初期段階で相談することが大切です。
よくある質問
管理費は何か月滞納すると競売になりますか?
一律の月数はありません。滞納額、督促経緯、管理規約、他の回収手段などにより異なります。「3か月までは安全」といった判断はできません。
滞納したままマンションを売却できますか?
売却自体が直ちに不可能になるわけではありませんが、滞納額の確認、買主への説明、決済時の精算方法の調整が必要です。早めに仲介会社へ資料を開示してください。
住宅ローンと管理費のどちらを優先すべきですか?
一方を自己判断で放置するのではなく、生活維持に必要な費用を確保したうえで、金融機関と管理組合等の双方へ連絡してください。状況により法的影響が異なります。
修繕積立金を自分だけ減額できますか?
区分所有者が一方的に支払額を変更することは通常できません。管理規約や総会決議に基づく費用のため、管理会社・管理組合へ確認してください。
カードローンで管理費を払ってもよいですか?
高金利の借入れで一時的に穴埋めすると、返済負担が拡大するおそれがあります。先に収支、売却可能額、金融機関等への相談を整理してください。詳しくは住宅ローン返済をカードローンで補うリスクをご覧ください。
滞納前・督促初期の相談が選択肢を残します
管理費・修繕積立金の支払いが難しいと感じた段階では、まだ家計改善や条件変更、通常売却を比較できる可能性があります。住宅ローンや税金も同時に苦しい場合は、問題を分けず、一覧にして整理することが重要です。
関連記事として、住宅ローン返済が苦しいとき最初にすること、収入減少後の住宅ローン対処法、税金滞納や差押えがある場合の相談例もあわせてご確認ください。
売却した場合の手取りと不足額を確認
管理費等の滞納額、住宅ローン残高、売却費用を含めて整理すると、通常売却で完済できるか、別の調整が必要かを判断しやすくなります。
参考にした一次情報
- 国土交通省「マンション標準管理規約」
- 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」
- 国土交通省 マンション管理・再生ポータル「管理状況チェックシート」
- 住宅金融支援機構「返済が困難になった場合」
情報確認日:2026年11月5日。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件の法律・税務判断を行うものではありません。具体的な法的手続きは弁護士等へご相談ください。


