物価高や金利上昇、収入の減少などで住宅ローンの返済が苦しいと感じたときは、延滞する前に家計とローンの状況を整理し、現在返済している金融機関へ相談することが大切です。
すぐに自宅を売却すると決める必要はありません。一方で、「もう少し様子を見よう」と何も確認しないまま時間を過ごすこともおすすめできません。
- 家計と住宅ローンの現状を数字で確認する
- 金融機関へ返済方法について相談する
- 家計調整・返済方法変更・借換えを比較する
- 自宅を通常売却した場合の手取り額を試算する
- 通常売却で完済できない場合に、任意売却などを検討する
任意売却は最初から選ぶ方法ではありません。返済を継続する方法と通常売却を検討したうえで、住宅ローンを完済できない場合に、金融機関の同意を得て検討する選択肢です。
最初に確認したい5つの数字
住宅ローンの返済について相談するときは、「苦しい」という感覚だけでなく、現在の状況を数字で整理しておくと話が進みやすくなります。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 住宅ローン残高 | 現在の借入残高、残存期間、完済予定年齢 |
| 毎月の返済額 | 毎月返済とボーナス返済を合計した年間返済額 |
| 金利条件 | 変動・固定の別、適用金利、次回見直し時期 |
| 住居の維持費 | 管理費、修繕積立金、固定資産税、火災保険など |
| 家計の余力 | 手取り収入、生活費、他の借入、預貯金、今後の収入見込み |
マンションの場合は、住宅ローン以外に管理費や修繕積立金がかかります。戸建てでも、固定資産税や修繕費を考慮する必要があります。毎月のローン返済額だけを見ず、住み続けるために必要な年間費用の全体を確認しましょう。
住宅ローン返済に不安を感じたときの判断フロー
大切なのは、「住み続ける」「売る」の二択にしないことです。返済方法の見直しにより住み続けられる場合もあれば、延滞前に通常売却を進めることで、選択肢を確保できる場合もあります。
まず現在返済している金融機関へ相談する
住宅金融支援機構は、収入事情などの変化によって返済方法の変更を希望する場合、現在返済中の金融機関へ申し出るよう案内しています。
- 毎月の返済額について相談できるか
- 返済期間や返済方法を変更できるか
- ボーナス返済の割合を変更できるか
- 金利タイプについて見直せるか
- 今後の金利見直し時期と返済額
返済条件の変更は自動的に認められるものではありません。審査があり、希望どおりにならないこともあります。また、月々の負担が軽くなっても、返済期間が長くなることなどにより総返済額が増える場合があります。
返済を続けるための選択肢を比較する
| 選択肢 | 向いている可能性がある状況 | 注意点 |
|---|---|---|
| 家計の見直し | 一時的な支出増加が原因 | 無理な節約で生活を維持できなくならないようにする |
| 返済方法の変更 | 収入減少が一時的で、将来回復が見込める | 審査があり、総返済額が増える場合がある |
| 借換え | 他行への借換えで負担軽減が見込める | 審査、諸費用、団体信用生命保険の条件確認が必要 |
| 金利タイプの見直し | 金利変動に対する不安を抑えたい | 固定化によって直近の返済額が上がる場合がある |
| 一部繰上返済 | 十分な手元資金が残る | 生活予備資金まで使わない |
| 通常売却 | 売却代金等でローンを完済できる | 仲介手数料等の売却費用も計算する |
| 任意売却 | 通常売却では完済できず、返済継続も困難 | 金融機関の同意が必要で、売却後も残債が残る場合がある |
借換えでは諸費用を含めて比較する
借換えでは、金利だけでなく、事務手数料、保証料、登記費用なども含めて判断します。現在より低い金利の商品があっても、残高や残存期間によっては、諸費用を含めると効果が限定的になることがあります。
繰上返済は手元資金を残して判断する
預貯金を使った繰上返済は利息負担を軽減できる可能性があります。一方、病気、退職、教育費、住宅修繕などに備える資金まで使うと、その後の家計が不安定になるおそれがあります。
住宅ローン返済のために新たな借入をする前に
返済の見通しがないままカードローンなどで住宅ローンを補うことには注意が必要です。一時的に支払えても、翌月以降は住宅ローンと新しい借入の両方を返済することになります。
金融庁も、返済の見込みが十分でない状態で借入を重ねると、多重債務につながる可能性があるとして相談窓口を案内しています。新たな借入で埋め合わせる前に、借入先や必要に応じて法律専門家等へ相談してください。
通常売却できるかを早めに試算する
返済を継続する方法と並行して、自宅を売却した場合の価格と手取り額も確認しておくと、判断材料が増えます。
売却想定価格がローン残高を上回っていても、仲介手数料、抵当権抹消費用、契約書の印紙税などを差し引くと不足する場合があります。反対に、現在の相場を確認すると通常売却で完済できる場合もあります。
通常売却と任意売却の違い
通常売却
売却代金と自己資金などにより、住宅ローンを完済して抵当権を抹消できる売却です。売主自身が売却時期や条件を比較的決めやすく、原則として最初に検討する方法です。
任意売却
売却代金などでは住宅ローンを完済できない場合に、債権者である金融機関等の同意を得て抵当権を抹消し、売却する方法です。任意売却をしても残債が自動的に免除されるわけではありません。
- 返済を継続する見通しが立たない
- 通常売却では住宅ローンを完済できない
- 不足額を自己資金で補えない
- 金融機関との協議が必要
- 競売手続が進む前に売却方法を検討したい
詳しい手続は「任意売却のご相談」をご確認ください。
相談先は問題ごとに分ける
| 相談内容 | 主な相談先 |
|---|---|
| 返済方法、金利、条件変更 | 現在返済している金融機関 |
| 自宅の査定、売却手取り額 | 不動産会社 |
| 任意売却の可能性 | 金融機関と任意売却に対応する不動産会社 |
| 債務整理、法的手続 | 弁護士などの法律専門家 |
| 売却に伴う税金 | 税務署、税理士 |
| 金融機関とのトラブル | 金融ADR機関など |
相談前に準備しておく資料
- 住宅ローンの返済予定表・返済明細
- 源泉徴収票または確定申告書、給与明細
- 預貯金と他の借入が分かる資料
- 固定資産税の納税通知書
- 管理費・修繕積立金の明細
- 購入時の売買契約書
- 今後予想される収入・支出の変化
よくある質問
滞納していなくても金融機関へ相談できますか?
相談できます。返済に不安を感じた段階で、現在返済している金融機関へ早めに相談することが重要です。変更の可否は契約内容や金融機関の審査によって異なります。
相談すれば毎月の返済額を下げてもらえますか?
返済方法を変更できる可能性はありますが、必ず認められるわけではありません。月々の負担が軽くなっても、返済期間や総返済額が増える場合があります。
返済が苦しくなったらすぐ売却したほうがよいですか?
すぐに決める必要はありません。家計、ローン条件、返済方法変更の可能性を確認し、同時に売却価格と手取り額を試算して比較します。
売却価格がローン残高を下回る場合は売却できませんか?
不足額を自己資金で補える場合は通常売却できる可能性があります。難しい場合は、金融機関の同意を得て任意売却を検討することがあります。
金融機関に相談しただけで信用情報に影響しますか?
相談することと、実際に延滞することや契約条件を変更することは同じではありません。信用情報の扱いは手続や金融機関の運用等によって異なるため、相談時に確認してください。
まとめ|延滞前に返済継続と売却の両方を比較する
住宅ローンの返済が苦しいと感じたときに、最初から任意売却だけを考える必要はありません。まず、ローン残高、返済額、金利条件、住居の維持費、家計の余力を確認します。
そのうえで、金融機関への相談、返済方法変更、借換え、通常売却を比較します。売却代金等で完済できない場合にはじめて、金融機関の同意を得る任意売却が検討対象になります。
住宅ローン残高と売却価格を整理したい方へ
まずは、売却後に残る金額を確認しませんか
通常売却できる可能性や不足額の目安を整理できます。売却を急かすご案内はいたしません。
参考にした一次情報
- 日本銀行「金融システムレポート(2026年10月号)」(2026年10月23日公表、2026年10月30日確認)
- 住宅金融支援機構「返済方法の変更を希望するとき」(2026年10月30日確認)
- 住宅金融支援機構「月々の返済でお困りになったとき」(2026年10月30日確認)
- 金融庁「貸金業法Q&A」(2026年10月30日確認)
- 金融庁「指定紛争解決機関一覧」(2026年10月30日確認)
※本記事は一般的な情報を提供するものです。返済条件変更や任意売却の可否は、契約内容、金融機関の審査、物件の状況等により異なります。法律・税務・債務整理については、必要に応じて弁護士や税理士等の専門家へご相談ください。



