裁判所から競売開始決定通知などの書類が届くと、「まだ競売を止められるのか」「自宅を売却する時間は残っているのか」と不安になる方も少なくありません。
競売の申立ては、申立債権者が取り下げることなどによって終了する場合があります。ただし、所有者の意思だけで自由に止められるものではありません。
任意売却を検討する場合も、住宅ローンを融資した金融機関や保証会社などの承諾を得たうえで、期限までに売買契約、代金決済、抵当権抹消に必要な手続きを進める必要があります。状況によって取れる方法や残された時間は異なるため、まずは届いた書類と住宅ローンの状況を整理することが大切です。
競売は所有者だけの判断では止められません
不動産競売は、債権者の申立てに基づき、裁判所が不動産を差し押さえて売却し、その代金を債務の返済に充てる手続きです。そのため、住宅の所有者が「競売をやめたい」と裁判所へ申し出るだけでは、通常は競売を止められません。
競売手続きが終了する代表的なケースには、次のようなものがあります。
- 住宅ローンなどの債務を完済する
- 債権者と返済条件について合意する
- 任意売却を成立させ、債権者が競売申立てを取り下げる
- 法的整理について弁護士等へ相談し、利用可能な手続きを検討する
どの方法が利用できるかは、滞納額、残債、不動産の価格、競売手続きの進行状況、収入などによって異なります。
「開札期日の前日」は何の期限か
裁判所の不動産競売物件情報サイトでは、競売申立ての取下げについて、売却代金が納付されるまでは取下げが可能と説明されています。
ただし、開札後に最高価買受申出人が決まった後は、原則として最高価買受申出人等の同意が必要です。そのため、申立債権者が確実に取り下げるには、開札期日の前日までに取下書を裁判所へ提出する必要があります。
ここで注意したいのは、「開札期日の前日までなら、所有者が必ず競売を止められる」という意味ではないことです。
任意売却の場合、開札期日の前日までに相談すればよいわけではありません。その前に、少なくとも次の手続きを終える時間が必要です。
- 不動産価格と住宅ローン残高の確認
- 債権者への相談
- 売出価格や配分案についての調整
- 販売活動と買主の決定
- 債権者による抵当権抹消の承諾
- 売買契約と代金決済
- 競売申立ての取下げ
買主を探す期間も必要になるため、通知が届いた段階、あるいは返済が難しいと分かった段階で、早めに相談することが重要です。
任意売却とは
任意売却とは、不動産の売却代金だけでは住宅ローンなどを完済できない場合に、債権者の承諾を得て不動産を売却する方法です。
一般的な不動産売買と同様に市場で買主を探しますが、通常の売却とは異なり、売出価格や抵当権の抹消、売却代金の配分などについて債権者との調整が必要です。
住宅金融支援機構は、任意売却について、通常の不動産取引として売買するため「一般的に競売より高値で売却できることが期待される」と説明しています。
ただし、任意売却をすれば必ず競売より高く売れる、残債がなくなる、引越費用を受け取れる、というものではありません。不動産の状態や市況、残債額、債権者の方針などにより結果は異なります。
任意売却に必要な債権者の承諾
住宅ローンが残っている不動産には、通常、金融機関などの抵当権が設定されています。売却代金で住宅ローンを完済できない場合、決済時に抵当権を抹消してもらうため、債権者の承諾が必要です。
買主が見つかっても、債権者が売出価格や売却条件を承認していなければ、抵当権を抹消できず、売買を完了できない場合があります。
したがって、任意売却では一般的な価格査定だけでなく、次の点も確認します。
- 住宅ローンや管理費等の残高
- 差押えや抵当権などの登記内容
- 固定資産税や管理費等の滞納
- 売却に必要な費用
- 債権者が承認可能な売出価格
- 競売手続きの進行状況
仲介手数料や引越費用はどうなるか
宅地建物取引業者が受け取る仲介手数料には、国土交通省の告示により上限が定められています。任意売却であっても、上限を超える仲介手数料を請求できるわけではありません。
住宅金融支援機構の任意売却では、状況により、売却代金から仲介手数料や抵当権抹消登記費用などを控除できる場合があるとされています。
一方、引越費用については、必ず売却代金から受け取れる制度ではありません。認められる費用や金額は債権者、残債、売却価格などによって異なります。
契約前に高額なコンサルティング料や不明確な費用を求められた場合は、その根拠と仲介手数料との違いを確認することが大切です。
自宅に住み続けたい場合
住宅ローンの返済が一時的に難しくなった段階では、まず借入先の金融機関へ返済方法の変更などを相談できる場合があります。
また、一定の要件を満たす場合には、住宅資金特別条項を利用した個人再生により、自宅を手放さずに生活再建を図れる可能性があります。
ただし、住宅ローン自体が免除される制度ではなく、利用には法定の要件があります。個人再生や自己破産などの判断は法律業務に当たるため、不動産会社だけで結論を出さず、弁護士等へ相談してください。
相談前に用意したいもの
相談の際は、手元にある範囲で次の資料を用意すると、状況を確認しやすくなります。
- 競売開始決定通知、期間入札通知書など裁判所から届いた書類
- 金融機関や保証会社から届いた書類
- 住宅ローンの返済予定表、残高が分かる資料
- 不動産の登記事項証明書
- 固定資産税、マンション管理費等の滞納状況
- 購入時の売買契約書や重要事項説明書
- 毎月の収入と支出の概要
すべてそろっていなくても相談は可能です。特に裁判所から届いた書類には期日が記載されているため、最初に確認してください。
まとめ
競売申立ては、債権者による取下げなどで終了する場合があります。しかし、所有者が単独で止められるものではなく、開札期日の前日まで待ってから動けばよいわけでもありません。
任意売却には、価格査定、債権者との調整、販売活動、買主との契約、代金決済、抵当権抹消などの時間が必要です。
エクセリオン東京では、不動産の売却可能価格と手続きの進行状況を確認し、不動産会社として対応できる範囲をご説明します。法律上の判断や債務整理が必要な場合は、弁護士等への相談も含めて整理することが大切です。
まずは、裁判所や金融機関から届いた書類をお手元にご用意のうえ、ご相談ください。
参考にした一次情報
一次情報確認日:2026年8月15日。個別の事案については、金融機関、裁判所、弁護士等へご確認ください。
