都心マンションでは、居住を目的とする個人だけでなく、法人や投資家が購入するケースもあります。短期間で売買される住戸もみられ、マンションが「住まい」であると同時に、投資対象として取引される傾向が強まっています。
ただし、現在の価格上昇を法人所有や短期転売だけで説明することはできません。建築費や土地価格の上昇、新築供給戸数の減少、実需、金利、再開発への期待など、複数の要因が重なっています。
この記事では、国土交通省などの公表資料をもとに、法人による取得や短期売買の実態と、マンションを売却する所有者が注意したいポイントを整理します。
この記事のポイント
- 都心部ほど新築マンションの短期売買が多い傾向がある
- 大規模マンションでは短期売買の割合が高い調査結果がある
- 短期売買は価格上昇要因の一つになり得るが、それだけが原因ではない
- 同じマンションでも取引時期や住戸条件によって査定額に差が出る
- 高値の売出事例だけでなく、成約価格と現在の競合物件を確認する必要がある
都心マンションで短期売買が増えている
国土交通省は、不動産登記情報と民間の価格データを使用し、2018年1月から2025年6月までに保存登記された新築マンション約55万戸を調査しています。
同省は、購入後1年以内に所有権移転登記が行われた取引を「短期売買」として分析しました。その結果、東京都を中心に、神奈川県、大阪府、兵庫県の一部でも短期売買の割合が高く、中心部ほど割合が高い、または増加する傾向が確認されています。
東京23区にある専有面積40㎡以上の新築マンションでは、2024年上期の短期売買割合が、大規模マンションで9.9%、それ以外で3.3%でした。ここでいう大規模マンションは、1棟当たりの保存登記数が100件以上の物件です。

大規模物件は市場での認知度が高く、比較できる取引事例も多いため、売買の対象になりやすいと考えられます。ただし、国土交通省は、その年にどのようなマンションが供給されたかによって割合が大きく変動する点にも注意を促しています。
法人所有が増えるとマンション価格は上がるのか
法人や投資家の購入が増えると、特定のマンションに需要が集中し、価格を押し上げることがあります。特に、再開発エリア、駅直結、大規模タワーマンション、希少な高層階などは投資対象として評価されやすい傾向があります。
一方で、法人所有や短期転売が増えたからといって、必ずマンション全体の価値が上がるとは限りません。価格は、土地取得費と建築費、新築・中古マンションの供給量、金利、国内の実需、投資需要、再開発、同じマンション内の売出戸数、管理状態などから形成されます。
国土交通大臣も、住宅価格の高騰には需要と供給の両面でさまざまな要因があり、投機的取引による影響は、可能性を指摘されている要因の一つという慎重な見解を示しています。「法人所有が多いから値上がりする」「短期転売があるから相場が崩れる」と断定せず、個別の取引状況を確認する必要があります。
所有者が見えにくいことによる管理上の課題
法人名義や投資目的で保有される住戸が増えると、実際に誰が居住しているのか分かりにくくなる場合があります。法人所有そのものに問題があるわけではありませんが、所有者が居住していない住戸が多いマンションでは、管理組合総会への参加、大規模修繕の合意形成、管理規約の周知などが課題になることがあります。
中古マンションの購入希望者は、専有部分だけでなく管理状態も確認します。そのため、法人所有の多さだけではなく、総会の出席状況、管理費等の滞納、修繕積立金、賃貸化率などを適切に説明できることが重要です。
短期転売を抑える取り組みも始まっている
一般社団法人不動産協会は、投機目的の短期転売を抑えるため、会員各社が判断して実施する対策として、次の方針を示しています。
- 1物件・1販売期における登録・購入戸数の制限
- 申込名義、契約名義、登記名義の厳格化
- 売買契約から引渡しまでの売却活動の禁止
ただし、対象物件や開始時期、制限内容は事業者ごとに異なります。また、引渡し後は購入者に所有権が移るため、私有財産の売却を一律に制限することには難しい面があります。税制を含む追加対策は検討段階の情報と確定した制度を分けて確認することが大切です。
マンションを売却するときに注意したいこと
高値の売出事例だけで査定しない
同じマンション内で高額な売出しがあると、その価格が相場のように見えることがあります。しかし、売出価格は売主の希望価格であり、実際に成約した価格とは限りません。
- 現在の売出価格と過去の成約価格
- 売出しから成約までの日数
- 価格変更の履歴
- 階数、向き、眺望、面積の違い
- リフォーム状況
- 同時期の競合住戸
短期売買された住戸が高値で成約していても、それがマンション全体の標準的な価格とは限りません。
購入者の属性と契約条件を比較する
法人や投資家は、自己居住用の購入者とは異なる基準で物件を評価することがあります。賃料、利回り、将来の売却可能性を重視する購入者もいれば、現金での決済や短期間での引渡しを希望する購入者もいます。提示価格だけでなく、融資利用の有無、契約条件、引渡し時期まで比較することが重要です。
売却時期だけでなく税引後の手取りを確認する
個人が土地や建物を売却した場合、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかにより、長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれます。
| 区分 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 15% | 5% |
| 短期譲渡所得 | 30% | 9% |
居住用財産の3,000万円特別控除などを利用できる場合があります。法人名義の不動産売却は、個人の譲渡所得とは税務上の扱いが異なります。売却時期を決める際は、税理士などの専門家へ個別に確認してください。
売却査定では「誰が買うか」まで考える
都心マンションの査定では、過去の成約事例から価格を計算するだけでは不十分です。自己居住用として探す個人、賃貸運用を目的とする投資家、法人、海外居住者、同じマンション内の所有者など、どの購入者層に評価されやすい物件かによって、販売方法や資料の見せ方が変わります。
管理状態がよく、修繕計画や毎月の費用が明確なマンションは、自己居住用の購入者にも投資家にも説明しやすくなります。室内の状態、眺望、賃貸中か空室かによっても、想定する購入者は異なります。
まとめ
都心マンションでは、法人取得や購入後1年以内の短期売買が一定数確認されています。特に大規模マンションや都心部では、その割合が高い傾向があります。
ただし、マンション価格の上昇は、短期転売だけでなく、建築費、土地価格、供給戸数、実需など複数の要因によって生じます。売却を検討するときは、話題になった高値事例だけで判断せず、成約事例、競合物件、管理状況、購入者層、税引後の手取りを総合的に確認することが重要です。
都心マンションの売却をご検討の方へ
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参考資料
各資料は2026年10月13日に確認しました。制度・税制は変更されることがあります。個別の税務判断は税理士等へご確認ください。


